蟻の触覚 花岡修平 「真我が目覚める時」
◎Wさんからいただいた記事です。
蟻の触覚
かつてのわたしは、常に独り言をつぶやく口を頭に埋め込んでいた。
そうやって、これは土だ、土くれだと、ブツブツ喋り続けていた。
ある日、頭の口を塞いでいると、その口が、蟻の触角に変わった。
そして今は、土くれの僅かな粒子の隙間にある蜜を、触角で注意深く探索している。
この希少な蜜の味を、どれほどの人が味わっているのだろう。
この隙間の奥には、そのような蜜で満ちているのを知った人は、どれぐらい居るのだろう。
2012-12-23