【時系列 花岡修平】エピソード(1)自我が現れた日
どういう訳か、2歳になるまで母親のオッパイから離れられないでいた。
だって、オッパイ飲む?って聞くから はぁ~い♪ ・・・みたいな。
ただの返事代わりだったんだよ。
そしたらね
ある日、いとこのお姉さんが家に来たとき、
見られちゃったわけ。
当然、からかわれたさ。
修平ちゃん。そんなにオッキくなってもオッパイ飲んでるの?
まだ赤ちゃんだったの? おかしいねぇ~って。
その時、
え?! あっ! って、
その時はじめて自分っていう意識が現れた。
自分はいくつ?2歳?
自分の身体に意識を向けてみると、
あっ! もうオッパイ飲んでいていい歳じゃない。
そして、次に現れたのは、
羞恥心と一緒に、虚栄心が!
虚栄心がどんどん膨らんで、
ああ なんとかこの自分をごまかさないと、隠さないと、って
焦ったけど、なんにも思い浮かばなくて、
うちのめされて劣等感に苛まれた。
それまでは、本当に自分っていう意識がなくて、
有るものは有るがままに、
親が手を焼いてくれるまま焼かれて、
転んで痛い時は、ただ泣いて、
見えてる世界を、ただ見ていて、
それが自我が現れた瞬間、
虚栄心という最も厄介なものに支配されてしまった。
それ以来、この厄介者のために、
ありとあらゆる悪行を経験してしまった。
それから現れる惨めさや、怒りや、虚偽、虚飾、恨み、憎しみ、
くだらないプライド、殺意、
多くの人の心を傷つけていながら償う事ををせず、
その度に無かった事として自分をごまかしていた。
でも、悪い思いをいだき、行為をしている時、それが悪ければ悪いほど、
なにか、近くで誰かが、何者かが見ているような怯えを感じていた。
結局、その何者かのおかげで、悪を極めるほどの愚かしさは持てず、
結果オーライのチキンでいられたんだよ。
だってその何者かが言うんだもの。
「それでいいのか?」って
言うっていうか、まなざしを感じてたんだ。
自分はごまかせない。
嘘をついていながら、これは事実だと信じ込む事はできるだろう。
でも、奥底の自分はそれが嘘である事を、見抜いている。
結局、嘘をつき続ける自分と、
それが嘘である事を知っている自分と、
二人連れの人生を歩いて、もうかなり経ってしまった。
そして今、嘘の通用しない奥底の自分に、
真っ向から出会う事になってしまった。
それは、至福と、愛と、許しを与えてくれたんだよ。
もうこれは、いつまでも浸っていたい、安らぎの極み。
そう、
あの時、これが現れたんだ。
2012-02-25